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乱闘

執筆者の写真: すずめやすずめや

出会った時から仲の悪いことで有名なめーめとモンティーヌがお互いに怪我を負う喧嘩をした。


近ごろモンティーヌはなんだかかまってちゃんであった。

いつもより人間を呼びつける回数が多くなっていたように思う。

それに末っ子のヤン子がとびかかったりパンチしてみたりするじゃれあいをしても怒らない。

めーめとも距離はあっても同じ部屋で4匹とも集まって微睡んだりしていた。

このままなんとなくみんなで団子になって眠ったりする未来が来るんじゃないかと思っていた。


モンティーヌは引きこもり気質のために自室もちだが、近ごろの呼びつけ過多と平和もあり、モンティーヌの自室の戸は開け放しであった。

三十畳の広さがあるアトリエとモンティーヌの部屋は隣同士で、少し離れて台所兼リビングの間がある。

すこしアトリエを離れて台所にいて、戻ったらモンティーヌが自室から自ら出てアトリエのなかにいた。

アトリエではヤン子とみんみとめーめが奥のストーブまわりで眠っていたはずだったが、

ヤン子だけが起きて入り口すぐにもっちりしているモンティーヌと向かい合っていた。

モンティーヌが自ら自室を出るのはかなり珍しいことだ。

施設にいた頃からひきこもり気質だった彼なのでこのところの平和ぶりについに心が解けたのだと嬉しくなった。

しかしそうこうしていたら犬のぬげたがやってきて、まあさすがにぬげたはでかいのでびびったモンティーヌは自室に帰った。

わたしもアトリエで仕事のつづきにかかる。

すると陽光が差した。

ちかごろくもり続きでどんよりしていたので雪見障子を開け、太陽の光で引きこもりモンティーヌもひなたぼっこをするかもしれないと自室からモンティーヌをアトリエに運び込んだ。

そこで油断して、少し目を離してしまった。


たぶんモンティーヌはひなたのことなんかどうでもよくて、落ち着く自室に帰ろうとしたところだったのだと思う。

それを奥で寝ていためーめが気づいて、起きて、たぶん見たのはモンティーヌの後ろ姿。

めーめはなぜかモンティーヌが歩くところや走るところを見るとかっとなってしまうのだ。

それでも近ごろはめーめ!と強く声をあげると途中で襲うのをやめていた。

でも今回はそんなわたしの強い声も聴こえなかったみたいだった。


一足遅れてモンティーヌの自室に飛び込むと毛を逆立て肩を怒らせためーめと四肢を投げ出しすみっこで吠えまくっているモンティーヌのすがたがあった。

めーめは飛び込んできたわたしを見てさっとアトリエに戻り、モンティーヌは唸りながらぶるぶる震えて、背中に引っ掻き傷を負っていた。

モンティーヌを宥めて、アトリエにいるめーめを叱らねばと見にゆくとめーめはめーめで顎に一撃くらっていた。

白黒猫のめーめの、白い顎に赤い血があった。

両成敗とはいえ先に襲ったのはめーめなのでできるだけ怖い声を意識して出し、叱る。

モンティーヌの傷の深さをちゃんと確かめようとモンティーヌの自室にまた戻ると、ヤン子とみんみがモンティーヌのそばについていた。

ふたりははじめ、めーめとモンティーヌの喧嘩があると脱兎の如く逃げては恐る恐る遠くから様子を見る、というかんじであったけれど、近ごろはなんとなく喧嘩自体を心配するようになっているのだ。

モンティーヌの呼び付けにも人間より反応してたりすることもある。

ふたりのおかげか、モンティーヌの震えは止まっていて、傷も素直に見せてくれて、幸いにもそう深くはなさそうだった。


ここのところ平和だったのでこの大乱闘には落ち込む。

めーめとモンティーヌは仲が悪いが、それでも、トムとジェリーとまではいかないまでも、お互いぷりぷりしつつ共同体として家族として喧嘩仲良しみたいになるのを夢見ていた。

怪我はよくない。

それは一線を超えている。

しばらくふたりは隔離しなきゃいけない。



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