top of page
検索
執筆者の写真すずめや

紋白蝶続

先日羽化途中の紋白蝶に出会ってしまったことをブログに書いたのだけど、そのあと畑で紋白蝶の蛹をみつけて贖罪半分好奇心半分で家に持ち込んで観察していた。観察している。


はじめにみつけた蛹はレタスにくっついていた。

まだ透き通るような黄緑いろをしていた。

何日かたつとだんだん色が薄くなっていくようだった。

途中で京都出張に出た。

5日ぶりに帰ってくると蛹はまだ蛹であった。

くっついていたレタスはしおしおにしおれていた。

蛹は茶色っぽく黄色っぽい色に変化していて、

なかみがすこし、透けていた。

透けたところをよく見ると、羽に当たる部分がどうもぼろぼろであり、もしかしたらこれは羽化できない蛹なのかもと思わされた。


蛹をわきにおいて、出張中に届いた郵便物をチェックしていたら税金だの電気代だのの払込表がたくさんとどいていた。

税金たっけえ!絶望!と今月払うぶんをクリップボードに挟んでまとめて、みたくねえなあと雑にわきにおいた。

しばらく経って気付いた、わたしは払込表を挟んだクリップボードを蛹の上に置いてしまっていた。

蛹は薄クリーム色の液体を体からすこしはみ出して、潰れてしまった。潰してしまった。


わたしの蝶々、といって家の中を連れ回していた蛹だった。

潰してしまったのがわたしの蝶々でなければぜんぶ国が税金を高くとるせいだと息巻いて責任転嫁に舵を切ることができたであろうが、蛹はわたしの蝶々だったので、わたしが全面的に悪かった。


わたしの蝶々を潰してしまって、そしたらそのあと、また蛹を見つけた。

こんどはセロリについていた茶色の蛹だ。

大きさや様子が似ているのでたぶんこれもわたしの蝶々とおなじ紋白蝶の蛹。

紋白蝶の蛹なんていままで見つけたことなかったのに、解像度が変わるというのはこういうことだ。

羽化したての蝶々と眼があってから、蛹を見つける眼がついた。

こんどの茶色い蛹は、透けているところを見ると羽もきちんと育っているようだ。

あの白黒の模様が透けて見える。

こんどの蝶々は、ちゃんと羽化して育つといいなあと、本当に思う。


蝶々の子である卵や青虫を殺す薬を畑に撒いていながらこんなきもちを持つ、これも二枚舌というのだろうか。

それでもキャベツを食い荒らす青虫を憎む気持ちと、蝶々を潰した後悔と、蝶々の羽化を見守りたい気持ちと、舞う蝶々を美しいと思うきもちは、みんな同じ畑で育っている。



Comments


bottom of page