あの雨の日
- すずめや
- 4月16日
- 読了時間: 1分
遠くに追いやっていたほうせきの日のことを思い出していた。
あの日のような雨が降っていた。
きつねのしっぽの踊り子を連れて海の向こうからやってきた歌い手が、ダイヤモンドの歌を歌っていたんだった。
あの舞台で聴いていた歌と雨の音を、今日はずっと聴いていた。
わたしのそばではあのころ生まれてもいなかった若い猫が耳を立てている。
あのころの感覚を引き摺り出して絵の具を触った。
たしかこんなふうにこんなふうに、と色を混ぜて筆を運んでいるうちにずぶずぶになった。
なんでここにいるんだろう、わたしどうしちゃったんだろう、ここはどこなんだろう。
久しぶりに足元が揺らいで
あしたは空を飛んであのころいたあの街にもどる。

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